120万都市への飛躍検討政策研究グループ視察報告書

日  時    平成24年9月3日(月)〜 9月4日(火)
視察先    さいたま市議会・新潟市議会
視察議員   ※剣持邦昭 ※田形清信 ※工藤公彦(※120万都市への飛躍検討グループメンバー)
         沢入育男 杉山三四郎 井上恒弥 亀澤敏之 佐地茂人 三浦雅司 早川清文
1)埼玉県・さいたま市企画調整協議会について

@ 内容

埼玉県とさいたま市は、平成24年1月30日に「埼玉県・さいたま市企画調整協議会」を設置した。

それまでも、埼玉県とさいたま市は良好な協力関係、連携が有ったが、さいたま市長の提案で、協議会を設置する事になった。県と市の二重行政を排除し、県と市で機能を分担するべきで、企画力が必要である。県と市で企画調整し機能分担を図れば県民市民のサービスにつながると言える。

主な協議事項は、防災、文化振興、スポーツ振興、産業振興、雇用、公共施設と広範囲に及んでいる。

防災分野では、大規模災害対策における連携として、帰宅困難者対策と緊急輸送道路沿線建物の耐震化などである。県が補助金を出し県と市の職員が両方で地権者の説得をした。連携する事に依り、きめ細やかな対応ができた。また、ゲリラ豪雨対策における連携では、河川整備と下水道整備などを行い、大きな河川は、県が浸水被害については市が行った。浸水被害の状況については、県は、詳細を知らなかったため、連携が功を奏した。

文化振興分野では、文化振興施策における連携を協議し、文化芸術に関する活動やイベント等の開催と芸術劇場・美術館・博物館等の文化施設との連携、芸術劇場周辺の街づくりについて協議した。現在も相互の文化施設での共同事業で連携している。23年度は、「ミュージアムヴィレッジ大宮公園」整備事業で県市などの9施設が連携した。また、芸術劇場周辺の街づくりに於いては、市はアートストリート整備基本方針を策定し、県市で、手形レリーフ設置事業を連携して行っている。

スポーツ振興分野は、市の大型スポーツ大会の開催・誘致と県施設の埼玉スタジアム・さいたまスパーアリーナ等と連携している。

産業振興分野に於いては、企業誘致・企業の海外進出支援、産学官の連携、中小企業支援制度融資などで県市が連携している。例えば、企業誘致では、用地情報や誘致案件の情報交換をし、企業誘致に取り組んでいる。産学官の連携では、県市が共同して、「産学連携支援センター埼玉」を設置し、新技術や新製品開発を支援している。更に、県は「次世代産業プロジェクトとして産学連携の「医療機器開発プロジェクト」を実施し、市は、「さいたま医療ものづくり都市構想」を策定し医療機器関連産業の育成・集積を目指している。

雇用対策の連携では、県は、「ヤングキャリアセンター埼玉」「若者自立支援センター埼玉」を設置し、若年層の支援を行い、「中高年就職活動支援コーナー埼玉」に於いて、中高年者の再就職活動の支援を行っている。市は、「さいたま市ふるさとハローワーク」を拠点施設にして各世代を対象に、国との一体的実施事業を含めた各種就労支援を行っている。また、障害者の就労支援では、県は「埼玉県障害者雇用サポートセンター」において、企業の障害者雇用支援や求人開拓を実施している。市は、障害者の求職活動から職場定着まで一貫した就労支援を行っている。また、県市連携で、女性の就業支援も行っている。

公共施設分野では、図書館に於いては、図書の共同購入を行い、公営住宅では、市営住宅の建て替えの際に県営住宅を使うなどの連携を図っている。また、浦和駅周辺道路の環境整備では、県市が連携する事に依り、スピードアップできた。 この様に、埼玉県とさいたま市は、多分野に於いて連携して事業を行う事に依り、二重行政を防止し、効率の良い行政運営を行っている。

A 成果・市政への反映等

二重行政の防止や効率の良い行政運営の面に於いて県市の連携は重要である。埼玉県の場合は、県庁所在地がさいたま市であり、県内の政令指定都市は、さいたま市のみであることから、県市の連携が容易であると思われる。静岡県に於いては、県庁所在地は静岡市であるものの、政令指定都市が、静岡市と浜松市の2市有り、県予算も分散しがちである。しかし、県との連携は、可能な限り進めていかなくてはならないと思う。埼玉県とさいたま市の企画調整した取り組みは、静岡市にとっても非常に参考になるばかりか、他都市に後れを取らないためにも、早急に検討すべきであると思う。

2)新潟州構想について

@ 内容

新潟州(都)構想は、平成23年1月に新潟県知事と新潟市長が共同提案した。  目的は、県と政令市との二重行政排し、行政の効率化を図る事、政令市が有する高度な行政機能を全県に波及させる事、地域の課題は住民に身近なところで解決できるよう基礎自治体の自治権の強化を図る事である。

また、構想の意義と理念は、日本海側での更なる拠点性の向上、地方分権・道州制における位置付けの明確化、県市連携による地域活性化、時代背景・地域の実情に応じた新たな都市の有り方である。構想の必要性は、現在の制度では、地方の自立は困難である事。全国一律型の制度が地方の成長や発展を阻害している恐れが有る事。広域・専門行政の一元化や基礎自治体の自治権強化の必要性が有る事が挙げられる。詳しくは、自主独立型の地域経営を志向し地方の自立を体現し、地域特性に応じた多様な制度を実現する。更に、自己決定力を高め競争力の有る自治体を造る事で県全体の拠点性向上させる。そして、新しい地方自治制度「新潟モデル」を実現させる。と言うものである。

しかし、現時点では、具体的な課題解決を優先し、多様な選択肢を確保し、現行制度を踏まえてスタートするところから始め、現行の県と市町村の制度を前提としない新しい自治制度を作らなければならないとしている。

構想推進は、大きく3つの方向性を課題としている。一つ目は、県と市の課題整理。二つ目は、国からの権限移譲について。三つ目は、目指す制度改正についてである。

一つ目の、県と市の課題整理を4つの課題(拠点性の向上、成長戦略の強化、安心安全な地域づくり、住民に身近な施策の展開)から検証したところ、次の課題が見えてきた。全国一律な大都市制度について、国・県・市町村の硬直的な役割分担について、法体系の規律密度や条例との関係についてである。国からの権限移譲についてでは、出先機関の受け皿として実績を積み重ねなければならない事や、単独での受け皿の可能性を模索しなければならないと言う課題が浮かび上がった。目指すべく制度改正は、法律の実施規定を包括的に条例に委任し、様々な態様に応じた柔軟な権限配分、国からの権限移譲の柔軟な受け皿をつくる制度改正を行わなければならない事が解った。

これらの課題を下に、円滑に移行するために、(仮称)新潟州構想推進本部を作る必要性があるとしている。

平成24年2月に「新潟州構想検討連絡調整会議」を設置し、円滑な移行を目指した。まずは、6つの課題の解決に向け県市担当部局間での検討を始めた。6つの課題とは、公営住宅、文化施設、特別高度救助隊、感染症対策、食品衛生、ハローワークの6つである。

しかし、現段階では、県議会の拠点化に対する反発で推進本部は立ち上がっていない。  今後の取り組みは、自治体だけでなく民間や国会議員を入れて推進本部を早期に設置し、検討から実践の場へのシフトをしてゆく。政令指定都市になってからの5年間の評価や検証を行い、新潟市に適した大都市制度について検討してゆくとの事である。

A 成果・市政への反映等

新潟州構想の内容は、埼玉県とさいたま市の行っている、企画調整協議会とほぼ同じである。新潟の場合は、それに更に国からの権限の移譲を加えたもので有ると言える。新潟市の場合もさいたま市と同じく、県の中の唯一の政令指定都市で有るが故、提案できるものであると思われる。静岡県の場合は、二つの政令市が有る事も、提案しにくい要因であるが、内容そのものは、地方主権を進める上で非常に参考になる内容である。「特別自治市」をめざす本市としては、難しい課題が山積しているが、埼玉や新潟を参考に着実に進めなければならないと思う。

(文責 工藤公彦)