視察先 12月13日:東京都杉並区
12月14日・15日:松本市
視察議員 田形 清信 井上 恒弥 遠藤 裕孝 栗田 裕之
遠藤 裕孝 大橋 英男 牧田 博之
目次
内容報告
杉並区
1. 杉並区:学校開放の取り組みについて
杉並区の学校開放は、昭和29年に東京都教育委員会が実験的に各区2校計58校を指定したことから始まった。その後、昭和40年には杉並区の小中学校合わ せて50校まで開放校を増やしていったが、地域の都市化現象により、オープンスペースの不足や交通事故の増大などに伴い、「子どもに遊び場を」との声が高 まる。
昭和61年度、小学校43校の校庭 体育館を、中学校23校の校庭 体育館 クラブハウスを、遊びと憩いの場、スポーツ文化活動の場として開放することになった。
一方昭和52年、杉並区基本構想が策定され、学校開放事業は区の重要施策として位置付けられる。(昭和63年改定も、同じ位置付けの中で今日に至る。)
本事業は地域のコミュニティ意識の高揚、区民の自主的活動の活発化を図ることも大きな目的のひとつであり、昭和58年には、全中学校に自主運営団体が設立 され、施設の利用調整のみならず各種レクリエーション大会の企画運営、地域情報誌の発行など活発な活動がスタートした。
学校開放に係わる組織は、大きく3つある。
@ 「学校開放運営委員会」は、学校長、PTA、利用者団体代表者、自治会等地元代表者などで構成され、全小中学校ごとに、学校開放を円滑に実施するために設置されている。
A 「利用者団体協議会」は、登録団体によって構成され、利用日の調整のほか、地域運動会、スポーツ大会、公開講座などを企画運営する自主運営団体です。
B 「学校開放連合協議会」は、各利用団体協議会の会長等によって構成され、学校開放に関する調査研究、学校開放だより(資料として添付)の発行、各利 用団体協議会間の連絡調整、さらには自主事業として、特定のスポーツを特定の場所時間に個人に対して開放する「個人開放」を行っている。
このように、区民に対して組織的にも体系的にも幅広い学校開放がなされ、静岡市と比べても格段に手厚いサービス提供の場を実現している。
そのほかに特筆すべきことは下記の通り。
@子どもたちの安全を確保するために学校に警備員を置いていること。(夜10時まで)
A「遊びと憩いの場」開放、プール開放において、それぞれ学校開放指導員、プール監視員を、行政から派遣して、事故防止、遊具の管理などを行っていること。
B地域の方々が茶道、囲碁など文化活動の場として、またスポーツ活動時の更衣の場、ミーティングの場として楽しめる台所や暖房設備を備えたクラブハウスが、区内20校に整備されていること。(内13校は校舎内余裕教室を利用、他は独立施設)
2. 学校支援本部について
視察直前の12月9日、朝日新聞1面に杉並区和田中で、「地域本部」主催の夜間塾(民間塾と提携)を開催すると掲載された。その「地域本部」がこの「学校支援本部」である。
この本部の目的はずばり、「教員のエネルギーを、100%授業と部活に懸けるため」に設置されたものである。活動内容は、総合学習等の補助、放課後学習等 の指導補助、土曜学校(土曜日寺小屋:通称「ドテラ」)の運営、芝生ビオトープの維持管理など、学力振興や緑化振興、安全防犯活動、スポーツ振興など分野 は多岐にわたる。
運営組織は、事務局長がトップとして、学校側との調整を図るとともに本部全体の事業を監督する。本部にはそのほか、事務局長を補佐する会計、庶務、広報、安産管理などの担当が置かれる。
地域の人材を発掘し、資材や情報の提供を仰ぎながら、多くの事業をこなす。事務室は学校の余裕教室を利用。 (学校支援本部の詳細は別紙資料参照)
この活動は、和田中学校の藤原和博校長(民間出身校長)が提唱したもので、和田中学校流「学校支援本部」と呼ばれ、杉並区の教育委員会は、「教育改革推進課」を本年新たに新設し、区内全校への展開を推進することになった。
3. 学校グランドの芝生化について
杉並区は、ISO14000を区として取得。教育委員会においては「エコスクール」づくりを進めている。視察した杉並第七小学校では、グランドだけでなく、屋上緑化、壁面緑化にも取組んでおり、一同驚いたものである。
平成18年度末現在、9校がグランドの芝生化を実施し、本年度は2校が実施予定であるとの事。東京都では19年度、公立小中学校70校で芝生化する計画を予算化している。
概算費用は、初期投資として、芝生の敷設費:1m2 当たり2万円、2000m2で4000万円。備品(芝刈り機等):約300万円、維持管理費として、年間250万円との事。
養生期間は、導入時:2ヶ月、毎年(秋):1ヵ月、芝の種類は、主にティフトン(夏芝)とペレニアルライグラス(冬芝)のブレンドを敷設。
メリットは下記の通り。
1)子どもたちへの教育的効果
- 杉並区:学校開放の取り組みについて
- 杉並区:学校支援本部について
- 杉並区:学校グランドの芝生化について
- 杉並区:その他(民間講師派遣事業、杉並師範館等 )
- 松本市:地区福祉ひろば事業について
2)学校環境の向上
- 校庭のほこりに悩まされなくなる
- 校庭が雨や雪に強くなる
- 暑い日でも体感温度が下がる
3)地域交流の促進
- 芝生の校庭は地域にとって協働の場であり憩いの場
課題は下記の通り。
1)子どもたちへの教育的効果
- 校庭が使えない期間の運動対策
- 日常的な芝生の管理
- 無農薬への対応
- 野球の公式試合対応
4. その他
@民間教員の採用について
A杉並師範館について
杉並区でのまとめ
静岡市の教育委員会には、子どもたちにとって地域にとって何がいいことなのか、何を求められているのかをしっかりと現状認識し、もっともっと地域に心を開いてもらいたい、もっともっと先を見て前向きに挑戦してもらいたいと、改めて強く感じた次第です。
( 以上文責 : 牧田博之 )
松本市
5. 地区福祉ひろば事業について
<松本市について>
人口22万8500人、高齢化率22.3%(長野県24.7%)(国20.8%)現在、要支援者数1424人・要介護者数7287人。
町会は463、地区は34、小学校区30、中学校区19となっている。
福祉ひろば運営の費用は、地区福祉ひろば事業振興業務委託料は、各地区高齢者人口に施設規模としては、総面積135〜155u・教養娯楽室100u・事務室20u併設施設として、出張所公民館・デイサービスセンター・児童館・児童センターなどがある。
<地区福祉ひろば事業>
高齢者に対する行政や地域の福祉サービスの対応は、自治体によりさまざまであり、サービス提供型から地域のまちづくり事業に次第にかわってきているとよ くいわれています。そんな中、松本市では、公民館を中心として、町会や地区といった身近なコミュニティを単位とした自治活動、学習活動が根付いており、住 民主体の福祉づくりのための基本があるといえます。具体的内容としては、ふれあい健康教室や地区の福祉を語る集い、健康・福祉づくり学習会・介護の集い・ 福祉施設や子供・学校との交流会・サークル支援事業・福祉ひろば祭り参加・いきいき健康ひろばというNPO法人熟年体育大会リサーチセンターと共同で行う ウォーキングを通じた健康づくり事業を行っています。
このように「地区福祉ひろば事業推進協議会」により、地区の特色を活かした活動が積極的におこなわれていました。
<目的として>
高齢者をはじめとするすべての住民が、住み慣れた地域において共に支え合う地域福祉の実現に向けて住民参加による健康・福祉・生きがいづくりの推進を図るためのものである。
このような目的を達成するための理念を掲げ活動の指針としています。
たとえば、福祉の拠点は、地域住民である。自助・共助・公助の連携と役割を軸とする。地域ぐるみによるいきいき健康づくりの推奨。学習を基本とした学びの町づくりなどさまざまな工夫をこらえての福祉文化創造を目指していることが伺えた。
<福祉ひろばの歴史>
H4.はじめは、市長が「29地区福祉拠点づくり」を提唱
H7.「松本市地区福祉ひろば条例」制定
H7.市内5地区で事業開始
H12.合わせて29地区で事業が開始される
H15.29地区福祉ひろば事業完成
<福祉ひろばの課題>
1 町会福祉への展開をより推進することが望まれる。
2 閉じこもり・介護予防の展開が必要。
3 生涯を通じた健康づくりへの取り組みを望む声が多い。
4 暮らしの中の地域づくりを進めたい。
5 より高い福祉学習を推進したい
6 住民の主体性と自治の形成・地域づくりをはかりたい。
7 協働・支援ネットワークの構築をはかりたい。
<まとめ及び静岡市に置き換えた場合の可能性>
1 この福祉ひろば事業は、清水区ではじめられた「S型デイサービス」に似ているように思う。
2 福祉学習を目指している点などは、当市は大いに学ぶべきである。
3 当市も協働・支援ネットの構築を推進する必要を感じた。(以上文責 栗田 裕之)