地域福祉活動に積極的に取り組んでいる自治体を視察して@子育て支援、A防災視線B教育支援C地域づくり支援D環境対策支援の活動について独自の特徴ある事業を調査し、本市の政策に反映できることを模索する。
価値ある地域福祉研究グループ視察報告
価値ある地域福祉研究グループ視察報告書
- 日 時
- 令和元年5月13日(月)〜15日(水)
- 視察先
- 岩手県 普代村・野田村
岩手県 久慈市
福島県 福島市 - 視察議員
- 畑田 響 尾崎行雄 井上恒彌 丹沢卓久 宮城展代
目 的
5月13日(第1日目)
はまゆりこども園給食費の支援事業について
視察先 岩手県 普代村
目 的
子育て世代への経済的安定に資するため、「はまゆりこども園」における利用者の給食費負担額を地域商品券で還元し、安心して子育てが可能な環境整備による出生数の増加を目指していることを調査し、本市の取り組みの参考にする。
概 要
普代村は、日本の灯台50選に選ばれた黒崎灯台の沖合いは、三陸漁場の心臓部ともいわれ、資源が豊富な漁場として知られている。産業は、第一次産業の漁業・水産養殖業が大部分を占めている。人口は2681人(10年前は3099人)で、人口減少は喫緊の課題である。そこで0歳児から未就学児まで受け入れている、村の認定こども園「はまゆりこども園」の給食費、月額4000円を地域商品券で還元することとした。消費税の増税や物価の上昇により子育て世帯の負担が増大しており、村内商店街においては、譜代バイパスの開通により、売り上げが減少していること等から、地域生活支援交付金を活用し「まち・ひと・仕事創生総合戦略」内の「結婚・子育て等支援」として実施した。園児の毎月支払われる給食費実費分に対し、半年ごとに普代村共通商品券で還元。この商品券は、普代商工会が発行している村内の取扱店で使用できるので、村の中での経済の活性化にも繋がる事業にもなっている。今年度予算は384万円、対象者は59人で、現在はふるさと応援基金を活用している。
本市への取り組み
少子高齢化の中で、子育て世帯の経済面からの支援を通して、環境整備に努めたいとの思いは共通している。本市の場合は規模が大きく、なかなか一概には進めない。しかし、この取り組みを各地の地区社会福祉協議会で行っている、居場所運営や、生活支援事業を有償ボランティアにして、元気な中高年のやりがい生きがい事業に育てていけると感じた。普代村の取り組みのように地域商品券にすれば、おのおのの商店街の活性化にも繋がり、経済効果にも波及すれば一石二鳥である。 (記録 宮城展代)
2020東京オリンピック‘パラリンピック復興『ありがとう』ホストタウンの取り組みについて
視察先 岩手県 野田村
目 的
野田村では、復興ありがとうホストタウンとして、台湾を受け入れている。本市でも、野田村と同じく台湾とホストタウン提携を結んでいて、野田村の事例を調査し、本市の取り組みに参考にする。
概 要
国では東日本大震災被災3県の自治体を対象に、震災時に支援してくれた海外の国、地域に復興した姿をみせつつ、住民との交流を行い、 2020年に向けた交流を行う復興ありがとうホストタウンを設置している。野田村では、震災時に台湾の仏教慈済基金会から義援金をいただいた。大阪のロータリークラブを通じて台湾のロータリークラブから中学校に和太鼓を提供された。それに対して、野田村では、中学生代表が台湾の口―タリークラブを訪問し、感謝を伝え、同クラブや台湾陸上選手へのインタピユーを行い、その内容をポスター表現し、住民に報告した。村と台湾との間で、感謝を伝える、人的交流、物産交流、インバウンドの目的をもっている。平成29年10月に野田村長が静岡市を訪問し、台湾陸上チームとも交流している。同年11月に復興ありがとうホストタウンに登録。また平成30年6月に野田中学生が静岡市を訪問し完成したポスターを寄贈している。平成30年12月に野田中学生が台湾でポスタ一発表を行った。野田村では、 4200名程度の人口で財政的な余裕もないことから、オリンピツク・パラリンピックではパブリックビューイングを予定しているとのこと
市政に反映すべき点
平成30年に台湾から演奏者を呼び、村で演奏会を行った。また、広報紙で交流の様子を詳しく書いている。市民、村民がわかりやすくホストタウンとして交流していることを認識できる取組みとなっている。
本市では安倍川中学生等一部の市民しか台湾と交流していない状態なので、より多くの市民の方にも交流できる仕掛けを構築することも検討すべき。
ホストタウンは全国各地にあることから、本市も周辺の市町とも連携し、良い意昧での切磋琢磨ができるように情報交換をすることも望ましい。 (記録畑田)
5月14日(第2日目)
NPO法人 やませデザイン会議の取り組みについて
視察先 岩手県 久慈市
目 的
岩手県久慈広域圏を活動拠点とする『NPO法人やませデザイン会議』における地域づくり活動や多様なセクターとの連携事業、中間支援活動等を調査して、まちづくりの推進に関することや魅力ある郷土づくりをどのように展開して、市政の、また広域圏の委託に応えているのかを知り、本市の取り組みに参考にする。
概 要
久慈市に活動拠点を置く『やませデザイン会議』は「自分たちの地域は自分たちの手で」という理念のもとに、平成4年に当時の青年会議所のOBを中心に70名ほどで設立され、平成12年に法人化し現在の組織に至っている。代表交代制をとっていて、現在の代表は7代目に当たる。理事17名、監事2名の役員を含む48名の正会員で成り立ち、年会費2万円を初期資金とし自主事業収益、受託事業収益等で運営している。活動は、月例の理事会で課題提起などを行い、地域課題解決に向けて内部研修のために3委員会が講師を招聘して例会を行っている。自主事業としては、「北三陸じもっと基金の取り組み」、「三陸鉄道支援の取り組み」、「地域未来創造への取り組み」等があり、受託事業としては、久慈市からは「勤労青少年ホームの管理運営事業」、「若者の雇用定着推進事業」等、岩手県からは「ジョブカフェ久慈の管理運営事業」、「県文化芸術コーディネーター担当事業」等がある。また中間支援活動としての市民活動支援室を設けNPO活動支援事業を行い、他団体として「いわて地域づくり支援センター」や「久慈市ふるさと未来づくり事業」との連携・協働を推進している。中でも、『北三陸じもっと基金』は久慈市、洋野町、野田村、普代村の4自治体の広圏域での取り組みで、「応援するのも、されるのも、地元です」という信念のもと、「これ実現したい・それに乗ります」という“共感寄付”と「地元のために使ってください」という“おまかせ寄付”と「地元に貢献したいことがあります」という“かんむり寄付”の3種類がある。この基金は、東日本大震災現地NPO応援基金「しんきんの絆・復興応援プロジェクト」を活用して創設された。共感寄付は、市民に寄付を募り地域づくり団体への活動資金を助成する制度で一口1000円からの応援を募集し、今年の案内では4団体がエントリーして、目標金額やどのような地域貢献活動をしたいかを市民へPRしている。「じもとの思いを、じもとの寄付で、実現させましょう!」というこの取り組みでは、3ヶ月の募集期間で100万円以上の寄付が集まり、これまでに中学生ボランティア団体や高校生のまちづくりミニFM局や障害者向け事業所などに基金を交付している。現在のNPO格では市民共感のための個人寄付を限定としているため寄付者の控除は無く、今後は法人対象の寄付事業を考えていくためにも認定NPOの資格を取得していく意向である。これからの地域づくり活動として、先駆的サービスの創造と市民セクターとしての信頼の確保を重点に置き、会員の中に福祉関係者もいることから、高齢者介護の法人立ち上げの支援活動も行っていく予定である。また、交流人口増加のための受け入れ態勢が弱いという課題のもとに、3月に復活した三陸鉄道支援の復興音楽祭や普代元気市などのイベントをはじめ、朝ドラ「あまちゃん」のロケ支援を行った経験を活かし、あまちゃんガイドの養成に力を入れて、「ガイドの会」の今秋の認定に向けて活動している。他団体への事業協力については、「市民がつくるページ」の市民記者としての地域情報を新聞社に送ることや「ふるさと未来づくり」として市内各地区においてのワークショップ支援(年間50回以上)を行っている。教育支援活動としては、地域ぐるみのキャリヤ教育の実現に向けて、中学校において「14歳の未来づくり授業」という多様な職種の職業講演会をコーディネートし、高校生向けにNPO入門講座への講師派遣事業を展開している。このように地域福祉活動から委託事業や教育支援まで事業幅も広い組織であるが、自治体の信頼も厚く、全般的にこの地域の活性化を推進していくための地域づくりの主役になっているNPO法人である。そのエンジンたる事務局に取り組みの熱い思いを聞くことができた。課題としては、全国的に共通であるが後継者の確保と育成について十分に見通しが立たず、事業承継に不安が残る。
市政に反映すべき点
・「まちづくりはひとづくり」というように、本市には『こ・こ・に』という人材養成講座があり、個人の教養向上にとどまらず、多様な人材の育成を図り地域が必要とする課題解決に対応するための事業がある。講座は各種あり市民の受講の需要に十分応えていると思うが、修了生の活躍の場が地域に少ないように感じる。そのような点で地域づくりに関係する団体を支援していくために、今回視察したNPO法人やませデザイン会議のような組織を形成して、地域支援をこれまで以上に拡充していけば良いと感じた。
・本市では自治会が中心となって地域活動にあたっているが、区役所との連携や住民自治の活動が主体となっていて、それぞれの地域特有の課題について対応できている自治会は少ない。また、課題解決のための地域協議会などの存在も本市は少ないように感じる。そこで、地域でワークショップ形式の研修会を支援して行えるようなアドバイザー的な組織が必要であると思う。今回視察したNPO法人などは、まさにその先駆的な存在であり、民間の組織であるが行政と同じベクトルで盛んな活動を展開している。それにより、行政自らが事業展開しなくても民間に委ねることで行政のスリム化が図られる。本市にもまちづくりに関する様々なNPOなどの組織が活躍中であるが、地域づくりの企画の部分から関われるような各地域の組織づくりに今回の事例を参考にしていきたい。 (記録 尾崎行雄)
5月15日(第3日目)
教育文化複合施設「こむこむ」の運営事業
視察先 福島市 (生涯学習課)
目 的
地域福祉と密接な係りのある「生涯学習」と「子育て支援」について、総合的な教育文化複合施設を設置して運営している福島市の取り組みについて研究し、静岡市での政策立案の参考とする。
内 容
平成5年、老朽化した福島市児童文化センターを建てかえ「子どもの夢を育む施設」の建設が計画される。NHK福島支局との協定のもと、国鉄清算事業団の土地を購入し建設計画を策定。平成17年に竣工。
施設の特徴
JR福島駅に隣接、NHK福島支局との合築。中心市街地の回遊性を高める機能を担っている。1階は児童書を中心とした図書館、2階は交流や学習のコーナーが設けられ、ワークショップなどが開催されている。3階は科学実験や体験型のワークショップなどが行われるスペース、4階はプラネタリウムや常設の展示室や遊びの空間が設置されている。運営は福島市振興公社が指定管理を受託している。
考 察
子どもたちが安心安全に多様な交流や体験を通じて学び、遊ぶことができる施設の整備は市民からのニーズの高い事業に位置付けられる。また、子どもたちの施設は、単に子ども達のためだけでなく、それを支えるボランティアの生涯学習や市民活動、地域の回遊性や活性化にも役立つものと考えられる。
福島市の「こむこむ」は、そういった視点からも中心市街地の一画に整備され、年間25万人程度の利用者を維持しながら運営されている。
静岡市の科学館「るくる」も同程度の利用者がある。指定管理費は福島市の「こむこむ」が3.1億円、「るくる」が約2億円。数字の比較としては、「るくる」の方が投資効率が高いということになるが、静岡市では各地域ごとに児童館、交流館、図書館、「まある」などが設置されており一概には比較できない。「るくる」は土日には利用者が多く混雑することなどから「こむこむ」のような大空間が望まれることも聞かれる。
また、近年では、公設民設を問わず、子どもたちの体験学習を主眼とした屋外施設の開設も人気であり、子育て支援や地域の活性化などの面からも、多様な施設整備について検討が求められている。「こむこむ」は、福島市が子育て支援と教育、市街地の活性化の方向性を市民に示した施設として大変、参考になった。 (記録 丹沢)
受動喫煙対策「空気のきれいな施設」「空気のきれいな車両」の取り組みについて
視察先 福島県 福島市
目 的
非喫煙者をたばこの煙から守る受動喫煙対策として、福島市が平成30年から実施してしる「禁煙に取り組む施設、車両」を認証している制度を調査し、本市での受動喫煙対策に活かしていくため。
概 要
福島市では、健康づくりプラン2018を策定し、特に重点を置く9つの健康づくりの推進項目を掲げ、その第一に禁煙・受動喫煙防止の推進を挙げた。脳・心血管系疾患が全国に比べて高く、また、喫煙率も高い。
喫煙者を男性27 %、女性7.8%を平成34年度には男性20 %、女性5%へ減少させる目標。また、末成年者も男性2.2%、女性1.4 %の現状をともに0 %にするという積極的な目標を設定。平成28年に福島県が単独で禁煙対策を行う施設を「空気のきれいな施設」として認証制度を開始。同じく30年に福島市と県内中核市で統一して制度を開始。平成30年6月までに市内で372施設だったが、それ以降に27増えて現在、 399施設。(教育施設が116,飲食店が70 と続く。)認証用件は、施設は屋内が終日埜煙であること(禁煙であることを表示。ビル内の施設は施設の階の共有スペースに灰皿を置いていないこと)で、車両は、同じく車内が終日禁煙であることとしている。
国でも東京オリンピック・パラリンピックを控え、平成30年に健康増進法が改正され、受動喫煙対策が大きく実施されることとなり、分煙化が義務化されていく。飲食店も喫煙、禁煙の表示をすることとなり、その制度との精査を今後、計る必要があるとのこと。
市政に反映すべき点
喫煙率を具体的な目標値で定めていることは評価される。
福島市特有の疾病を捉えて、健康に関する政策が盛り込まれていることも評価される。県の施策に同調し、人口の多い中核市が実施したことは参考になる。
がん対策と受動喫煙対策と直接結んでの啓発はしていないとのことだが、本市もがん対策条例を議会発議で制定したところであり、受動喫煙対策も今後積極的に行うことが必要である。