- 日 時
- 平成27年1月29日(木)〜30日(金)
- 視察先
- 薩摩川内市 スマートハウス
九州電力 川内原子力発電所展示館
(以上、鹿児島県薩摩川内市)
いちき串木野市 市役所、西薩中核工業団地
(以上、いちき串木野市) - 視察議員
- 田形清信、浅場武、牧田博之、早川清文、畑田響
環境にやさしい再生エネルギーグループ視察報告書
目 的
会派内の政策グループである「環境にやさしい再生エネルギー」グループでは、本市の一層の環境政策、とりわけ再生エネルギーの活用を推進し、来年度から始まる第3次静岡市総合計画の策定ならびに実施において議会での議論に活かすため、まちづくり全体に環境配慮型の政策を駆使している薩摩川内市と、日本一の環境配慮型工業団地の建設を目指す、いちき串木野市の取組を視察した。
内 容
@薩摩川内市の取組(人口約98000人)
次世代エネルギーについて、みんなで創るエネルギーのまちとして『超スマート』を掲げている。九州半島側から約30kmと離れた甑島を市域をしていて、山間部や海岸部、市街地等多様な地理的特性をもっている。今後の10年間に取り組む次世代エネルギービジョンを平成25年に策定し、薩摩川内らしい視点で、また、これまでにない技術開発や新しい産業の育成を重視している。このビジョンでは、たとえば、企業について「市内にエネルギー関連企業が立地し、多くの市民が働く」など、家庭、学校、医療機関、大学、製造事業者の未来像を具体的にかつわかりやすく表現している。
ビジョンに掲げた目標の具体的な現在の取組は、視察したスマートハウスモデル実証事業をはじめ、高齢者の見守りサービスとしてのスマートグリッド(次世代電力網)実証実験、離島である甑島での電気自動車レンタカー(休日はレンタカーに、平日は公用車として活用)導入実証事業、駅と港を結ぶ電気バス導入事業等多岐に渡る事業を展開している。
視察をしたスマートハウスは、川内駅からすぐのところにあり、住宅の高断熱化等の省エネ、太陽光パネル等の創エネ、蓄電池等の蓄エネをあわせた次世代型住宅をモデル的に建築し、市民に気軽に集う啓発拠点を平成26年に着工し、9月に竣工した。太陽光発電システムや燃料電池、蓄電池等は、地元企業による有志の無償貸与である。設計で1000万円、工事費が5300万円、企業等からの貸与の額が2500万円相当。
A九州電力 川内原子力発電所展示館
東日本大震災後、全国最初の原子力発電所の再稼働が予定をされている川内原発の展示館を視察した。福島第一原発は沸騰水型原子炉であり、川内は加圧水型の違いがある。原発は、活断層上にはなく、想定している地震による津波は海抜5mとしていて敷地高さは13mである。格納容器破損防止対策、放射物質の拡散抑制対策などの安全対策を現在進めており、その訓練も実施している。地域住民の不安を取り除くための広報も積極的に行っている。
Bいちき串木野市の取組(人口約3万人)
環境モデル都市の実現を掲げており、まずは第一段階として日本一環境負荷の少ない工業団地として西薩中核工業団地の整備を進めている。(総面積60ha)第2段階として市庁舎や一般家庭にも環境配慮型建築物を進め、第3段階としてスマートグリッド・スマートシティーを計画している。
西薩中核工業団地の建設は平成24年5月に始まり、太陽光発電を約700世代分の発電となる2000kwh(水産加工、焼酎製造等の工場の屋根)行っている。
24年の7月1日に国内の太陽光発電による全量買い取り制度が開始された日に合わせて売電を始めた。事業主体には地元企業、市、金融機関等からなる合同会社(出資金1億3000万円)を設け、設置先企業との間で、システムの設置と賃料を支払い、設置先企業からは合同会社に出資をしてもらう。総事業費は9億7000万円で、内訳は設置企業等から1億3000万、市民等からの資金が4000万円、金融機関からの借り入れが約8億円。市民からの出資は、配当2%となっており、現金か地元特産品での配当かを選べる。このようなスキームでの資金調達事例は、金融庁に参考事例として出されている。平成25年度新エネ大賞経済産業大臣賞を受賞。参考にして宮城県登米市でもコーディネーターを務めた(株)パスポートが進められている。((株)パスポートは、合同会社の代表社員であり、設置企業の1つ濱田酒造の販売部門の会社)また、西薩中核工業団地は、平成24年には経産省から「次世代エネルギーパーク」の認定を受けた。
工業団地では、土地賃貸料を10年間無料、電気料金を最大75%補助、水道料金を10年間55円/㎥などの誘致策を行っている。
いちき串木野市では、太陽光発電以外にも、風力発電(11機あり、現在洋上にも計画中)、バイオマス発電(焼酎粕からメタン発酵)も行っている。
◆成果・市政への反映等
薩摩川内市、いちき串木野市は、それぞれ約10万人、3万人と地方都市としては、小規模なほうであると言える。しかし、両市は、お互いに隣り合わせの自治体のなか、薩摩川内市にある原子力発電所というエネルギーのまちをそれに頼ることなく、次世代のエネルギーとして多岐の施策を駆使して先駆的に行っている。薩摩川内市でのスマートハウス等の取組やいちき串木野市での工業団地での太陽光発電システムを合同会社設立し、企業や市民をうまく巻き込みつつ、資金も金融を活用している点が非常に参考になると考える。
地域経済への浸透、初期投資など自治体だけでは難しい中、官民連携して同じ思いで、まちの資源であるエネルギーを創る姿勢は、本市も参考にしていなかければならない。
環境にやさしい再生エネルギーを推進していく際に重要な視点は、今回の視察先でも実践していた「エネルギー消費の実態把握と地域資源としての再生可能エネルギー調査」、「官民、市民と3者が同じ方向を向いて施策を進めること」、「金融をうまくつかって継続性、好循環ること」だと感じました。
(文責 畑田)