視察先 那須烏山市 山形県天童市 新潟市
視察議員 沢入育男 近藤光男 佐地茂人 遠藤裕孝 牧田博之 早川清文
目次
目次
那須烏山市議会 中山 五男 議長
那須烏山市教育委員会学校教育課 藤田 繁 課長補佐
那須烏山市議会事務局 堀江 久雄 局長
那須烏山市議会事務局 藤野 雅広 主査
市の概要
平成17年10月1日に那須郡南須賀町と同郡烏山町が合併し、那須烏山町が誕生しました。那須烏山市は、栃木県の東部に位置し県都宇都宮市から概ね30〜35kmの距離にあります。
地勢は、八溝山系に属し、那珂川が平野部を貫流し、那珂川右岸には丘陵地帯が形成され、丘陵を縫うように荒川や江川などが貫流しています。
道路は、国道2本と主地方道は7本があり、国道293号は市の北部を東西に、国道294号は市の中心部を南北に走っています。
鉄道は、JR烏山線が市内を東西に走り、この地方の足としての役割を果たしています。
平成14年9月に南那須町で、ゆとり教育により懸念された学力低下対策の一環として始まった。
中学3年生(希望制)を対象に同年9月から翌年2月の毎週土曜日、民間塾講師が国、数、英の3科目について授業を実施してきた。平成15年度には旧南那須町の小学6年生(希望制)にも対象を拡大した。
平成17年10月に那須烏山市が誕生し、旧南那須町で実施してきたサタデースクールは、平成18年9月(毎週土曜日)から市内全域の小学6年生及び中学3年生(希望制)を対象に事業を拡大することになった。
これに伴い、平成18年度に、市教育委員会、小中学校長、宇都宮大学等で構成する運営委員会を設置し、教材の選定やカリキュラムを作成するほか、参加者募集の周知、意識調査の企画など事業をサポートする組織を立ち上げた。 また、講師には教育、文化、産業支援等で包括的な協定を結ぶ宇都宮大学教育学部の学生が、チームティーチング(T・T)方式で授業を行うこととした。大学生が2人組となり、授業を行うチームティーチング(T・T)方式は、大学のカリキュラムにもあまりないため、大学生にとっても得難い実践研修の場を提供することができると考えた。
@ 目的
個に応じた指導を通して、基礎的、基本的な学力の定着を図るとともに、次の段階へのステップアップのための学習習慣の充実を図る。
(特にサタデースクールをとおして身に付けたい学習習慣とは、「毎日決まった時刻に、決まった場所で、学習に取り組む習慣」や「学習方法」など家庭学習を進めていく上での習慣と、「学習課題に静かに丁寧に取り組む習慣」や「わからないところは、恥ずかしがらず先生に質問する習慣」など授業中の習慣をいう。サタデースクールの目的である基礎的、基本的な学力及び望ましい学習習慣を対象とする生徒に一斉指導、T・Tによる個別指導をとおして、身に付けさせていく。)
A 成果
課題
事業費
講師資金、事務局費、バス・ストーブ燃料代、委託料全て予算計上している
児童・生徒の負担はテキスト代と保険料である。
この様にゆとり教育に対する不安は全国的に何らかの対策を講じていた。
人口3万足らずの那須烏山市が小学校5校、中学校3校全児童数約2200人に対して、近隣大学を巻き込んで取り組む教育の熱意に感心した。
天童市議会事務局
天童市議会 鈴木 照一 副議長
天童市教育委員会 学校教育課 元木 満 課長
天童市教育委員会 学校教育課 中田 敦 指導係長
天童市議会事務局 大内 淳一 事務局長補佐(兼)調査係長
市の概要
天童市は、村山盆地のほぼ中央に位置し、東西が18.4km。東は奥羽山脈を境に宮城県仙台市と接し、西は日本三大急流の一つ最上川を境に寒河江市と、南は立谷川を境に県都山形市と、そして北は乱川を境に山形空港のある東根市と接しています。内陸性気候の特色があり、自然に恵まれた地域です。
天童市の教育
* 目標を持ち、その実現に意欲的に挑戦する子ども
* 基礎基本の力しっかり身につけた子ども
* 自由と規律を自覚し、自立した子ども
* 他人の痛みがわかる人間味あふれる子ども
* 心身ともに健康でたくましい子ども
以上を目標に児童生徒にたくましく生きる力を育てる。
重点施策
@天のわらべ すこやかな「まなび」育みプロジェクト
A天のわらべ 豊かな「こころ」育みプロジェクト
B天のわらべ 輝く「いのち」育みプロジェクト
今回は @天のわらべ すこやかな「まなび」育みプロジェクト に絞り研修した。
特別支援教育の視点で全ての教育活動を推進し、不登校の未然防止と学力向上を目指す。9年間を通して児童生徒一人一人の教育的ニーズに応じた教育支援を着実に行うとともに、小中の連携と同様、幼稚園や保育園、児童館との連携を強化する。
天童市の小中学校で不登校の増加が問題になった。小学校から発生の兆しがみられ、中学校で増加し対処療法的な施策は限界(不登校になってからでは難しい)
不登校についてわかってきたこと
不登校の半数以上は発達障害の疑いがある。
周囲の無理解のため、適切な支援を受けられなかった。
学力不振、ともだちとかかわれない、叱られる。
自己肯定感が育たない。
よって学校に行きたくない・・・・・・
平成21〜23年の3か年計画で天のわらべ すこやかスクールプロジェクトを立ち上げた。
目標1・不登校の未然防止
目標2・学力の向上(波及効果も期待する)
1 専門家チーム結成(大学教授、指導主事、教育指導員等)の巡回相談を
各校年2回(小学校12校・中学校4校)よって年32回
2 特別支援教育コーディネーター養成研修開催
年間30時間、3年間で90時間の研修に教員と指導員が参加する
3 すこやかスクール指導員・支援員等の配置を行った
教員免許をもった指導員18名、支援員15名、幼児言語指導員10名
22年度は4名だった介助員を8名に増員
特別支援教育推進委員会は推進委員会と専門家チームに分けた
推進委員会は20人で各小中学校の校長、特別支援教育コーディネーター、 各幼稚園、保育園・園長、保育士、大学教授、医師、教育委員会(指導主事・教育相談員)、福祉関係者(健康福祉課長・保健師)、労働関係者で組織し 年2回、特別支援教育推進状況の確認及び評価と個別の教育支援計画の評価及び管理を行う。
専門家チームは大学教授、指導主事、教育指導員で各校を巡回指導する。 内容は・特別支援対象児のスクリーニング、個別検査の実施と報告・個別の教育支援計画の作成、修正・個別の指導計画の作成支援・対象児の担任への指導、助言・校内研修(特別支援教育研修)の実施・ 保護者面談の実施、家庭訪問の実施を行う
特別支援教育対象児の選定と指導の手順は
専門家チームの巡回相談の要請を受け、専門家チームが巡回相談の実施を行う。 医療機関(医師)・個別検査(すこやか指導員)が個別に観察と検査を行い、対象児の選定(対象児の決定と指導体制の組織化)をし、個別支援計画の作成 (教育支援計画、指導計画)し、指導・支援を継続しながら専門家チームの巡回相談(計画内容の評価、具体的な指導助言)を受ける。この段階で保護者に対して啓蒙活動も行う。
支援の段階と支援体制
A ・病院での診断名・障害名 対象児認定
・専門家チームによる判断
・病院に通っている、薬を飲んでいる 支援計画作成
・障害児学級在籍の子供 支援計画作成
・言葉の教室通級、LD等の通級
・30日以上の欠席(不登校)
・慢性的な疾患(心臓病、てんかん等)
B ・発達障害等が疑われ個別検査が必要 保留
(専門家チームによりA又はC段階の最終判断) A段階の判断
判断により医療機関への受診もある で対象児
C ・配慮が必要である(予防教育)
(学習遅進、発達障害等の疑似、多動傾向
不登校傾向、家庭状況など)
D ・現在、特に早急な支援を必要としない。
以上の4段階に分けて判断し支援する。
特別支援教育コーディネーター研修、特別支援教育スーパーコーデネーター研修、特別支援教育スーパーコーディネーター研修を個々に30時間行い、支援体制の強化を行っている。
各学校で取り組む内容は *学校全体で認識を持ち、チームを組む *コーディネーターを複数指名する *小中の連携(コーディネーター間の引き継ぎ) *保護者への啓蒙。
そして市教委で取り組む内容は *事業推進の理解啓蒙 *学校の取り組み評価 *事業費の確保 *人材の確保 *施設の整備(机の天板の大判化)子どもがものを落とさないことにより、不必要な行動をとらない。
この結果、平成19年度に比べて84人が39人まで不登校が減少した。
各学校の成果にもとづいた今後の方針
@ 児童生徒一人一人の理解のためのとらえ方が、より深くなり、特別支援教育の視点からの授業改善の必要性が学校で認識されてきた。
(適切な学びのハードルの設定・小学校低学年からの課題解決能力の育成)
A かかわりを大切にした価値ある体験活動が実施されている
(計画的な本物体験や五感を活用させる授業の実施・人とかかわる喜びや人の役に立つ喜びを味わらせる授業や体験活動の設定)
B 校内研究を学校づくりの中核とした担任力向上の取り組みがみられるようになった。
(担任力・・学級担任の指導力)
しかし授業改善における課題も見えてきた
* 強化の力が身に着く授業を
* 子どもが活躍する授業
* 授業者が具体的な目標を
* 学習指導を組織的に
* 個を鍛える視点を
その中でも丁寧を「ゆっくり」「ハードルを低く」と勘違いしないように指導する。
また、教員の自己評価力の向上も努力しなければならない。
授業内容にサッカー型の授業と野球型の授業を取り入れ子どもたちの特性を引き出す。
サッカー型・・決められた内容を決められた時間で行う。
(ロスタイムは1〜2分)
野球型・・・・決められた内容を修了するまで行う
(基本的に9回を想定し何時間かかっても)
学習指導要領の改訂に伴い教科書が厚くなった。しかし内容が増えたからではなく、どの子にも対応できるように作られていると受け止めている。
「全員に教えるところ」
「理解の良い子が活用するところ」
「調べるときに活用するところ」
「ドリル学習や宿題で使用するところ」
「発展的な学習で、全員でやるところ」
「さらに主体的に学習させたいところ」
など内容を選択して実施する必要性がある。
以上のように不登校や問題行動の児童生徒をいろんな角度から観察し、その対応に教育委員会のみにとらわれず天童市全体で取り組み成果を上げている。
新潟市議会事務局
新潟市教育委員会 地域と学校ふれあい推進課 神田一弘 副参事・指導主事
新潟市教育委員会 地域と学校ふれあい推進課 江口 滋 副参事・指導主事
新潟市議会事務局調査課 坪川直樹 係長
新潟市が目指す教育ビジョンの将来像
日本海政令市・田園型政令市・分権型政令市→教育の方向とあり方⇒新潟市の教育ビジョン
基本目標
政令市新潟が目指す子どもの姿・市民の姿
* 学力・体力に自信をもち、世界と共に生きる心豊かな子ども
* 生涯を通じて学び育つ、人間力溢れる新潟市民
* 自立した学びと開かれた学びを支援する学習環境
自立した学び
まなびを進める一人一人が主体的に学ぶ目標を決め、方法を選択し、自らの能力を活かし伸ばす学び
開かれた学び
地域社会全体が信頼とパートナーシップに基づき子育てや教育活動を支え担っていく学び。
学校教育と社会教育と地域住民・民間団体が一体となって教育活動を進める。
学社融合から学社民融合で人づくり、地域づくり、学校づくり
新潟市教育ビジョン5つの学びの扉
前期(平成18年から21年までの重点取り組み)
* 学・社・民の融合による教育を進めます。
* 生涯を通じて学び育つ活動を支援します。
* 確かな学力、豊かな心、健やかな体を育みます。
* 教育関係職員の力量形成と校種間連携を進めます。
* 可能性と個性を伸ばす、特別支援教育を推進します。
後期(平成22年から26年までの重点取り組み)
* 学・社・民の融合による教育を進めます
* 家庭・地域の教育力の向上。
* 確かな学力、豊かな心、健やかな体をはぐくみます。
* 学校・教育関係職員への支援
* 可能性と個性を伸ばす、特別支援教育を推進します。
地域と学校が手をつなぎ、共に歩むことで
学校が元気になれば
地域が元気になれば
以上のような僧正効果が生まれる。
地域ぐるみの教育は子どもが元気に、夢や目標に向かいいきいきと学ぶ姿が地域も活気があり、元気になる。
教育基本法(学校、家庭及び地域住民等の相互の連携協力)
13条 学校、家庭、地域住民その他の関係者は教育におけるそれぞれの役割と責任を自覚すると共に、相互の連携及び協力に努めるものとする。
そこで 「地域教育コーディネーター」 が必要となり事業開始を開始する運びとなった。
役割は
地域や学校のニーズを把握し、共に「元気が出る取り組み」を企画、実施する。
* 学校支援ボランティアの組織・整備
* 地域人材の発掘と活用
* 学習活動、課外活動への参画
* 地域の学びの拠点づくり
コーディネーターに求められるものは
@ ナットワーク(他団体、NPO等との連携ができる
A マッチング力(人材確保と配置)
B コミュニケーション力(人間関係の形成)
C インフォメーション力(事業、サークル、団体の紹介)
D プロデュース力(元気が出る取り組みの提案と企画・運営)
どのような人材を対象に確保するか
地域活動、教育活動に熱心な方
学校に理解・感心があり信頼の厚い方
学校・・保護者や子どもが卒業したもと保護者
公民館などの社会教育施設・・フットワークの軽い方
地域自治会等・・地域で頑張っている方
学校教職員を退職した方
各学校の推薦において教育委員会が委嘱する(時給1200円)非常勤
実際の活動はどこで・どんな活動をするか
活動場所
各学校のボランティア室または、余裕教室に設ける事務スペース(学校で適切な場所の提供がある)
活動日
週3〜4日程度(1日当たり4時間を目安)
実際には年間総時間数のなかで柔軟に活用・年間総時間520〜680
学校のニーズによりボランティアの募集を行う。
単発的な依頼からスタートするが、学校の教育計画を把握して、教師との打ち合わせを行い、教師の考えをボランティアに伝え活動に反映してもらう。
ボランティアとのコミュニケーションは活動終了後に振り返りの時間を持つ。
会議室ではなくコーディネーターの部屋において、自由に感想や意見を述べる。
それを次回に生かす。
学校に伝える事もあるし、逆に学校の思いを伝える事もある。
又、新しいボランティアの紹介、企画の提案、ボランティアどうしの人間関係づくりに役立て、人の輪や趣味の広がりにつながり、地域の街づくりへと発展する。
コーディネーターの研修は市教委主催で年に4回行う
@ 地域と学校パートナーシップ事業研修会
A 「学・社・民の融合で元気アップ講座」
学校主催で年1回
@ コーディネーター(ボランティア、公民館職員。行政職員等)を交えたワークショップ
コーディネーターが自主的に
@ 区ごとに1か月〜3か月に1回
平成18年からの市の取り組みの結果小学校103校、中学校55校に対して247人の地域コーディネーターが誕生している。
今回の視察においても、市町において地域にあった必要性のある教育活動を取り組んでいた。本市においても問題行動対象児童が見受けられるわけであるが、
学校だけでは解決できない部分もある。市教委、学校、専門家(医師等)との連携の中で、保護者の理解、協力を得て子どもの環境、他の児童・生徒の教育環境の整備に係るべきである。
また地域教育コーディネーター事業は本市における学校応援団事業とは趣旨は同じと考えるが、教師とボランティアとの間にコーディネーターの存在があり教師のわずらわしさが軽減される、ボランティアの指導力(性格・どこまで踏み込むか・能力等)の把握に気を使うこともなく子どもの授業に集中することができる点で評価できる。
パイロット校を選択し取り入れる必要はあると考える。TTにも習熟度授業にも総合的な学習にも
又、地域のおじさん、おばさんに叱られることも今の子どもには必要と考える。
我々も積極的に関わる努力をする。
(文責 早川清文)